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水野建築研究所
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多角形の家
敷地に沿って緩やかに曲がりながら落ちていく屋根を持つこの住まいは、住まい手が終の棲家として暮らせるよう、ほぼ平屋の計画となっている。建物は敷地の東面に寄せて計画し、西面を将来の増築用地として担保している。また、 隣接するアパートからの視線を遮り、かつ住まいからはアパートが 見えにくい配置となるよう計画している。前面道路からの視線を遮るため車庫を別棟として計画し、道路 から水廻り部分などが見えづらくなるように計画している。 屋根形状は緩やかな片流れ面と直交するように大きく傾けることで、 冬期の積雪の落下を最小限にとどめるような形状とした。
不整形なかたちとなった大きな屋根の下の空間は、ゆっくりと暖気が 頂点に集まり、そこへ定常風を送ることで高低差6~7mの空間 全体の温度差が1~2℃に保つことができ、住まい手にとってヒートショックの少ない快適な空間となっている。 構造は計画段階より大工と試作を重ね、最終的に手刻みが可能な形状となるよう、19度ずつ2度折れる3枚屋根のかたちとした。 それでも刻みの際に必要な定規の種類は20数種類に達している。その際のコンピューター上の数字と 大工が作った定規との数的誤差は1000分の5ミリ以下であったのは、 棟梁の技量によるところが大きい。
この住まいに使用したのは、構造材、造作材ともに富山市産 の杉で、その点でウッドマイレージの少ないことによる(材料輸送 にかかる)CO2排出量の低減に大きく貢献している。 地域の材料を使い、地域の手で作ったこの住まいが、住まい手 にとって唯一無二の心地よい空間となり続けてくれること、そして また、地域の中に静かに融け込んでくれることを願っている。
一般住宅設計 | 水野敦 水野桂子
種別 | 新築
構造 | 木造
予算 |