金沢は伝統的な建築と近代的な建築がうまく共存する、大変魅力あふれる街です。20年以上前から私は何度も金沢を訪れており、その度にこの街の奥深さを感じ新しい発見をしてきました。この住まいはそんな金沢のほぼ中心に位置する、武蔵地区での計画です。
　周辺は文化的な施設が点在する地域で、Ｌ型の敷地は南北で道路に接しています。伝統環境保存区域にかかるこの場所にどのようなデザインで周辺環境になじませるか、また45坪弱の変形敷地をどう生かすかがポイントでした。外観デザインには規制がかかるため金沢市と打ち合わせを重ね、コンセプトや使用素材等の理解を得てデザインを決定しました。色調規制により原則として白色は禁止色でしたが、上階部分のボリュームを抑える等白壁の必要性を説明し、さらに垂直方向のプラン構成でありながら変形Ｌ型敷地を生かして白いフレームを敷地いっぱいに広げ、水平方向を強調するデザインにまとめています。また、大通りから見たファサードは面積が大きくなるため、面を分節化し、レンガタイル、コンクリート化粧型枠打放し、白壁をバランスよく組み合わせることにより周辺の環境に調和し、伝統と新しさの混在する街並みにうまく埋没させることができました。
　内部構成は都市型住宅らしく最上階にプライベートリビング、ジャグジー、茶室を設け、非日常的なリゾート空間を演出しています。日常生活を営むＬＤＫは2階に設け、開口部を絞って大通りからの視線をコントロールすることにより、プライバシーを確保しています。
厳しい法規制の中で生まれた都市型住宅。静かなリゾート空間を内包するこの住まいが、時間の経過とともに金沢・武蔵の景観の一部となることを願っています。