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川添純一郎建築設計事務所
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若ヶ谷の家
若ヶ谷の家は2004年に竣工し、その丁度10年目になる2014年に、再度撮影を行いました。建物が10年を経ても、美しく変化し続ける様子を記録したいと考えました。
ロケーション
兵庫県播磨地方にある町の中心市街地に位置し、もとは製材所の原木置き場として利用されていた土地である。敷地の4面のうち2面は道路、1面は用水路を隔てた隣地に接している為、直接の隣地は西面のみである。それぞれ銀行、郵便局、住宅、集合住宅が建ち、2~3階建ての低層の建物に囲まれている。
コンセプト
夫婦2人のための家であり、仕事のアトリエを有している。
元々この敷地が開けた場所であった為、道路の交差する角は、以前の見通しを確保できるようオープンスペースとしている。南側の塀は敷地境界線からセットバックし白樫の生垣とするなど、敷地のボーダーラインに中間領域を設け、一般に開放している。
敷地周辺は銀行、郵便局への人が多く日中は比較的賑やかな環境である。住宅としてのプライバシーを如何に保ち、かつアトリエのパブリシティーを展開できるかが検討された。建物には敷地の南北の境界まで伸びるRCの壁が貫通している。この壁を境にアトリエのゾーンと住居のゾーンに分れ、それぞれの空間を保っている。外部空間は更に数枚のRC壁によって分割され、内部から連続する空間の一部として設定している。
幾つかに分割された空間を、平屋の薄い屋根が覆うような形をイメージした。薄い屋根は、南北面を広く、東西面を狭くし、四周に回る庇の深さを1.1mである。夏季の直射をさけ、室内に庇の陰を落とす。日本の風土の特性を生かした計画とした。
また設備的にも省エネルギー・省資源、負荷の軽減を実現している。
具体的な施策は以下の通りである。
・ パッシブシステム:広い屋根面積を活かし、屋根に中空層を設け、太陽熱で加熱された空気を冬季は強制循環を行い内部に放熱し、夏季は外部に強制排気する。
・ 小屋裏強制排気システム:夏季の屋根の中空層を強制排気し、屋根の相当外気温度(日射を加味した外気温度)を下げる。天井面温度を室内温度に近いづけ負荷を軽減する。
・ 太陽光発電システム:太陽電池パネルで発電した直流電気を交流に変換し、建物内部の負荷に供給する。
・ 井水利用:敷地内の井戸より、便器洗浄水・散水・洗濯用水に利用し、上水使用量の削減及び自己水源を確保する。
使用している材料は、木、石、珪藻土など素材に近い無垢の材料を極力用いている。時間の経過とともに、素材の緩やかな変化を楽しむ家を考えた。
■概要
□所在地/兵庫県加東市
□設計・監理/川添純一郎建築設計事務所
□構造・規模/木造軸組工法・平屋建て
□用途地域・建蔽率・容積率/第1種住居・60%・200%
□敷地面積/576.98㎡
□建築面積/144.25㎡
□延床面積/138.99㎡
□最高高・軒高/6.02m・3.20m
□竣工/2003年7月
□設計期間/2002年4月~10月
□施工期間/2002年10月~2003年7月
□平成16年度「まちなみ住宅」100選 奨励賞
■外部仕上げ
□屋根/ガルバリウム鋼板たてはぜ葺き、構造用合板t=9+空気層t=30+断熱材t=30(旭化成:ネオマフォーム)+構造用合板t=9
□外壁/ジョリパットこて仕上げ、モルタルこて押さえt=20、構造用合板t=9+空気層t=24+断熱材t=25(旭化成:ネオマフォーム)
□アプローチ土間/玄昌石
■内部仕上げ
□床/杉板 t=30
□壁/珪藻土
□天井/珪藻土
■建具
□外部/玄関木製板戸:シーダー、木製框戸:米ヒバ、その他:アルミサッシュ
□内部/木製框戸:米ヒバ、木製板戸:シナ合板フラッシュ
■設備
□パッシブシステム/ストレートシロッコファン(風量1500m3/h)、主ダクト:グラスウールダクト325φ、モーターダンパー(夏季及び冬季の切替)、温度スイッチにより作動
□小屋裏強制排気システム/ストレートシロッコファン(風量300m3/h)、ダクト:グラスウールダクト150φ、温度スイッチにより作動
□太陽光発電システム/太陽電池パネル9枚:1.17KW(シャープ)
□井水利用/敷地内に作井し、便器洗浄水・散水に利用
□薪ストーブ/対流熱式、最大出力:8,000kcal
一般住宅設計 | 川添純一郎
種別 | 新築
構造 | 木造
予算 |